悪名高き皇帝たち

ローマ人の物語 (18) 悪名高き皇帝たち(2) (新潮文庫)

ローマ人の物語 (18) 悪名高き皇帝たち(2) (新潮文庫)

私はコンスタンティノープルの陥落 (新潮文庫)に出会って以来、塩野七生さんの著作の大ファンです。その塩野七生さんの代表作「ローマ人の物語」の文庫本最新刊が発売されたので、早速購入しました。
いまはまだ20巻の半ばまで。ティベリウスの皇帝としての治世について読み終わったところです。
しかしながら、カエサルアウグストゥスの時に比べ、やや読むペースが落ちてしまうのは、やはりこの二人に比べると「悪名高き」皇帝たちのジエスタ(所業)はヴィルトゥ(器量)やフォルトゥーナ(運命)において格や品が落ちるせいでしょうか。

ティベリウスは3代目皇帝として非常に優秀な人物であったのですが、あまり古代の評価は高くありません。4代目カリグラにいたっては古代から現代に至るまで稀代の悪皇帝として名高く、それゆえかティベリウスには弁護をしながらその治世を叙述し、カリグラに対してはその所業のみを淡々と記す形になっています。

カエサルの巻がもはや物語ではなくラブレターと言えるほどカエサルへの愛に満ち溢れた幸せな著書であり、アウグストゥスの巻が醒めてはいるもののそれゆえにアウグストゥスの凄みが際立つものに仕上がっているのに対し、ティベリウスをはじめとした物語では醒めるどころか冷淡で、第一次史料に対する批判までやってのけているためにやや読む意欲がそがれる部分がなきにしもあらず、といったところです。

まだ先にはあの皇帝ネロが控えているのでいまから陰鬱になってしまっているのですが、ここを通り過ぎてしまえば「五賢帝時代」がやってきます。ローマ帝国の全盛期は、また愉しい読み物になっていることでしょう。