美しい人

いつも髪を切ってもらっているお店に、久しぶりに訪れた。
金曜日の朝、会社へサービス出勤する前のこと。
お店はかつて、髪を切る人を指名できたけど、いまは出来ない。
たまたま、いつも指名してた人に当たった。

気の多いボクのことだから、きっとその人にまた恋でもしていたんだと思っていた。
ちょっとカッコよかったり、ちょっとキレイめだったりするとすぐに好きになっちゃう悪い癖。

その人の何が好きかといえば、目。
仕事をしているときの、真剣な目。

もともととてもきれいな人なのだけど、髪を切っているときの目はものすごく真剣で、一途で、美しい。
けして妥協を許さない、それでいて鋭すぎない、優しくて穏やかで、でも、研ぎ澄まされた、目。
やっとわかった。たぶんきっとそうだ。これは恋じゃない。憧れだ。
仕事をする姿が美しい人への、憧れだ。

自分が美しいとうぬぼれたことはない。
でも、まじめさではうぬぼれたことはある。
そして、そのまじめさに自分で傷ついたこともある。

仕事をまじめにやりすぎて、かえって人に迷惑をかけたことが何度もある。
適当に仕事をやることを覚えて、ものすごくいやだったこともある。

それを超越していると言ったら否定されるだろうけど、そう思わせてくれる人。
きっと、その人にあこがれていたから、ボクはずっとあの人に髪を切って欲しかったんだ。

こんどまた髪を切ってもらえたなら、今度は伝えよう。
「あなたの仕事をしている姿が好きだから、じっと見つめていてもいいですか」って。