イタリア語で公衆トイレはヴェスパシアーノというらしい。

ローマ人の物語 (21) 危機と克服(上) (新潮文庫)
ローマ人の物語 (22) 危機と克服(中) (新潮文庫)
ローマ人の物語 (23) 危機と克服(下) (新潮文庫)
皇帝ネロ死後のローマ帝国の混乱と、フラヴィウス朝の三人の皇帝による事態収拾・復興。
唾棄すべきは無能。それのみをテーマにしています。
ヴェスパシアヌスは著者が喜び勇んで書くような才能の持ち主ではありません。ですが、それでちょうどよかったのだと書いてあります。どこかしら憎めない、ひょうひょうとした人柄が、著者のフィルターを通してではあっても伝わってきます。
やるべきことはやり、やらなくていいことはやらない。平時のリーダーはこうでなければいけない。ただ、その手のリーダーが混乱を制したというのも面白いですね。
ちなみにヴェスパシアヌスは公衆トイレに税金をかけた皇帝として有名です。公衆トイレが自分の名前になってしまって、さすがの皇帝も苦笑いしたかもしれません。膨らみ損ねたパン種のような顔を精一杯膨らませ、怒ってみせるぐらいはしたでしょうね。

しかし、本当に塩野七生さんはユリウス・カエサルにくびったけなんですね。ガリア帝国のくだりで、そのへんが見え隠れするのには微笑を禁じえませんでした。