人の親になるってどういうこと?

うさぎドロップ (1) (FC (380))

うさぎドロップ (1) (FC (380))

うさぎドロップ  (2) (Feelコミックス)

うさぎドロップ (2) (Feelコミックス)

30代独身の男が6歳になる祖父の隠し子を育てることになるお話。

以下ネタばれ。

最初はただ、主人公の30代独身男性こと大吉の一挙一動にことごとく共感し、6歳のりんのけなげさににやけるだけだったのだが、物語が進むにつれこれはずいぶんと計算に基づいて描かれたマンガだということに気がついた。

大吉はごくごくふつうの、まっとうな社会人である。やや正義感が強く、正しいと思ったことならなりふりかまわず行動にうつすきらいはあるが、そこがまず第一のポイント。
大吉のまわりの大人たち(母親、父親、いもうと、祖父の息子(おじ)ら親戚たち)はごくごく常識的で普遍的に存在しそうな人たちとして描かれている。であるがために、物語の冒頭でいきなり祖父が死に、その葬儀が終わるか終わらないかのうちにりんの押し付け合いが始まる。
読者も大吉も、これに腹を立てる。そして大吉は勢いあまってりんを引き取ってしまうのである。

大吉は文字通り悪戦苦闘するのだが、それはりんにしても同じ。
二人が不器用なりにまっとうに暮らし始めると、大吉の父母や妹はりんを可愛がりはじめる。ごく普通のめいとして、あるいは孫として、自然な反応を示し始める。

りんが(当たり前だが)とても魅力的に描かれている。
子供らしいやさしさ、けなげさ、いじらしさを持つ。子供の悪魔的要素をまったく持たない、手間のかからない子供である。不幸な境遇とあいまって、さらにいとおしさは増すようにしむけられている。

物語が進むとりんの母親というのが出てくるのだが、これがまたえげつない存在として描かれる。母親としての責務は果たせない、少女のような存在。おそらくりんの本当の父親かもしれない青年と同居していて、マンガ家として生計をたてている。暮らしぶりはそれほど悪くはなさそうだし、りんの母親としてみなければそうそう腹の立つ存在ではない、ごくありふれた現代的な女性。

だが、大吉は(そしてその奮闘を見ている読者の大部分は)りんの母親に対し憤りを感じる。
そのへんの誘導が実にうまいマンガである。

大吉は頭のてっぺんから足のつま先まで善人というわけではない。
りんの母親にしろ、そのほかの登場人物も、真っ黒な悪人というわけでもない。
何かしら短所と長所、そして短所が生まれた理由すらもちゃんともっている語句普通の人々として描かれている。

大吉が感じる感情の全ては、ごくごく一般的な人間のものをうまくピックアップしている印象がある。
一方、そのほかのひと、特にりんの母親の言動は、どこかはてなのブログでよく見る働く女性たちと一致しているところが少なくない。

眠いので続きは明日。